「中2だぁ?てめぇフカシてんじゃねーよ」
「俺はこれでもモテんすよ、誰かさんと違ってマメなんでね」
「本命には相手にされてねーけどな」
「・・・・・・」
年頃の青年達が集まれば、自然と話題はエロ方面へ。今日の議題は『初体験』童貞を捨たのは何歳か?である。
会議は駅に程近いファーストフード店で行われる。そこに湘北バスケ部の面々が終結していた。
ただし一部常識人は不参加であるが。
「そういう三井サンは?」
テーブルに身を乗り出しながら、嘲笑を口元に浮かべた宮城リョータが問い詰めた。
「お・・俺か、忘れた、んな昔の話。それより・・・そーだ、お前らは?なんか見るからにドーテー軍団って感じだ
けどな」
若干言葉を濁しつつ、三井は通路挟んで隣の六人掛けの席を陣取る通称桜木軍団に話を振った。
「何だと、ミッチーそれは聞き捨てならないぜ。湘南のマダムキラー高宮望に対して」
「そりゃお前シルバーキラーの間違いだろ、こいつよく老人に拝まれんだぜ」
「そうそう、ありがたやありがたやって大仏扱いだぜ、スゲーよ」
ギャハハと大はしゃぎのメンバーの中で唯一人落ち着きを払っている人物に、三井は声を掛けた。
「お前は?喰いまくりとかな」
「そんなことないよ」
桜木軍団随一の冷静沈着男、水戸洋平は一瞬眼を鋭く光らせたが、すぐに笑みを漏らした。
「けっ嘘付くなよ、少なくともあいつらとは違うだろ」
あいつらとは無論ドーテー軍団のことである。仲間に武勇伝を聞かせては失笑を買っている高宮達を水戸は横目で見て
から三井に向き直った。
「俺も童貞だよ、三井さんと同じ」
「なっ・・・」
そう言われた直後、目線と目線がバチリと合ってしまい思わず三井は視線をそらしてしまった。
背中をいやな汗が流れ落ちた。詭弁か本音かいずれにしてもそうとう喰えない男である。
何か釈然としないものがあり、水戸に対して何か憎まれ口でも叩いてやろうと口を開けた瞬間、
三井は隣に座っていた花道に思いきり肩を掴まれた。
「なんとミッチーもエッチまだなのか!」
「んな訳ねーだろ、お前と一緒にすんな!ヤリまくりだ俺様は」
「よしよしミッチー、そんな見栄を張らなくてもダイジョウブだ。心配しなくとも、やり方ならオレが教えてやる」
などと満場一致の童貞男、桜木花道が声高らかに宣言しながら三井の頭を撫ではじめたのだから堪らない。
たちまち周囲は爆笑の渦となった。
「何が教えてやるだよ花道ィ、よく知りもしねーで」
「うはー、ミッチー気を付けろ、ぜってー間違った情報教えられるぜ」
「そうそう、コンドームは出し終わってから付ける。とかな」
「ぎゃはははソレ意味無いじゃん」
「どあほう・・・」
ここは若者が集うファーストフード店である。制服姿の男子学生が居たとて別になんら違和感もないだろうが、
そこは一癖も二癖もある彼らである。黙っていたとしても目立つ輩だ。それが、一斉にテノール、アルトの爆笑合唱で
はさすがに周囲の同世代たちも嘲笑や好奇の眼差しを向けざるを得ない。店内の温度を二・三度度上昇させ得るような
熱気が渦巻いていた。
その渦中の人、三井は顔を真っ赤にして花道に食って掛かっていた。童貞呼ばわりされたことに腹を立てているのだ
ろう。
「まあまあミッチー落ち着け、この天才が女性の落とし方をデンジュ・・・」
「オマエは喋んなバカロウ!!」
「「ぎゃぁはははは」」
花道のこれまたぞろ不可解な台詞は三井の怒号と、悲鳴に近い笑い声によって遮断された。
「聞いたか落とし方だとよ、意味わかってんのか」
「あれだぜ、チョークスリーパーでもするつもりだろ」
「落とすの意味がちげーってーの」
「ひー笑いすぎて腹イテー」
そろそろ酸欠で倒れる者が出てきてもおかしくないほどである。
「うるせー!お前等も黙れ、喋んな!!」
もはや涙目の三井が両手でテーブルを叩きながら地団駄を踏み出した。
「みっちゃんは童貞じゃない!」
食事中に傍迷惑なセリフを響かせる濁声の主は、真打ち登場!三井寿応援団長、堀田徳男である。
三井のピンチに何処からとなく馳せ参じるこの男は白馬の王子かそれとも只の駄馬か。
「皆良く聞け、我らがみっちゃんのハ、ハツ」
何ゆえか涙ぐむ団長、
「みっちゃんのハツ・・・ハツ」
『心臓(ハツ)?』
所詮食べ盛りの畜生たちである。皆の心に焼肉が連想された頃、団長様はいよいよ滝のような涙を流し、苦悶の表情
を浮かべた。
「み、みっちゃ・・ん・・・のハツ・・ハツタイケンは、高1のナ・・・ナツでテツ」
直後、堀田は真後ろにドウと倒れ込んだ。三井のエルボーが見事に決まったのである。
【ナツでテツ】謎の言葉を残し堀田番長無念の失神。
とてつもなく重大な事実を聞かせてくれそうだっただけに惜しい人を亡くしたものである。
「なーんだ高1の夏か、案外普通っすね、それよりテツって誰?」
とはニヤケ笑いを浮かべている宮城である。
「ミッチー、ウソはイカンよ、ドーテーのくせに。そういえばテツってどっかで聞いた名前だな」」
あくまでも自分と同類説を信じて疑わない花道。
「う、うっせー、徳男の話なんざ気にするな!」
焦りだす三井。
「ところで俺達が謹慎くらったのって誰のせいでしたかね?」
「そりゃーミッチーとロン毛の、アー俺そいつにシコタマ殴られたっけ」
「イヤー、アン時ゃ俺達も派手にやったよな、若気の至りですな」
「それミッチーに云ってやんなよ」
以上が桜木軍団のミーティングの模様である。
「と、とにかく俺の話はこれで終了だ」
焦燥の三井が強引に話を凍結させた。
「・・・せんぱいの初エッチって、男?」
「・・・・」
辺りの空気を一気に凍らせてしまってもお構いナシの流川、偶の発言がこれである。
「付き合ってたんすか、それともその場の勢い?」
「勘弁してくれ、鉄男とは何もねえ、アン時だって未遂だ未遂!ってなんだよオメーらその眼は、
・・・・そーだよオリャどーせ童貞だよ、んなもん捨てなくたって生きていけらぁ!な、桜木」
「おお、ミッチーやはり天才の考えは凡人には分かるまい」
三井寿、得意の自爆でカミングアウト。そして、徐に立ち上がると、もう一方の童貞君と互いに肩を組み
「俺は天才♪」などと訳の分からぬ歌を唄い出したのであった。
「いいか、オメーらシコシコ出してばっかいるとバカになんだぞ」
「そーだそーだ、俺様とミッチーはドーテーだから天才だ」
「その通りだぜ、さっすが花道」
などと変な説を唱えだす両人。性交と自慰は別物だろうに。
変な友情の芽生えた二人の行く末が気がかりな湘北バスケ部の面々だった。
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いろいろとキャラを詰め込みすぎた感じの変な小話です。数ある三井受のカプで管理人的苦手筆頭が鉄三です。
読むのは好きなんですけれど。
グレ期のシビアなみっちゃんが書けないので、鉄男さんも書けそうに無いのです。徳三なら書けるかも・・
ほら徳ちゃんてなんかギャグっぽいし(←失礼)
読んでいただいてありがとうございました。